第2回 小学校英語に関する基本調査(教員調査)【その1】
少々旧聞に属する内容ですが、
小学校英語に関して、とても充実してかつ示唆に富んだ調査結果が
Web上に公開されているのでご紹介したいと思います。
ベネッセ教育総合研究所が2010年に行った
「第2回 小学校英語に関する基本調査(教員調査)」の結果レポートです。
この調査は、第1回が2006年に行われ、教員調査と保護者調査とに分かれていたのですが、
今回は、文部科学省による全国の小学校英語教育(外国語活動)義務化(2011年)
の前年に行われた調査です。
本調査は、全国から無作為に抽出された8,000校にアンケートを送付し、
その中から約30%弱の解答を得て結果をまとめたもので、
・背景など
・解説と提言 4人
・調査結果
・分析
・資料
・付録
に分かれています。
本日は、この中から解説・提言の四人目、
実際に小学校で英語を教えている現場教師の
金子真理子先生による提言をご紹介しましょう。
金子先生はまず、外国語活動がほとんどの場合、
学級担任とALTとのティーム・ティーチングによって行われている、
という調査結果を紹介しています。
学校における外国語活動の指導者を訪ねる設問に対して、
90%以上の解答が学級担任とALTと答えているのです。
(解答は複数回答)
ALTは、「「発音について見本を示す」「児童と外国語を使って会話をする」
「自然な外国語の使い方の見本を示す」など、英語活動に不可欠な存在」
になっていることは事実ですが、といって学級担任の役割も大変大きく、
「初めて外国語を学習する子どもたちの不安を解消する心強い存在」
であると指摘します。
これは、小学生と言う年齢を考えれば当然と言えることで、
たとえ高学年とはいえども、子どもたちにとって「担任の先生」は、
昼間の時間帯の親代わりのような存在です。
担任教師は、クラスの児童一人一人の学力と性格を十分に把握して
日々の指導に当たっていますから、
この役割と実績を他の外部の人間がとってかわることは不可能でしょう。
しかし、自治体によっても異なりますが、
外国語活動全ての時間においてALTとのティーム・ティーチングを行うことが
できるわけではありません。
自治体の予算の関係で限られた時間しかALTが来校しないことも多いのです。
その際に担任教諭にとって「心強い味方」となっていたのが、
文部科学省が作成して全国の小学校に無料配布した「英語ノート1・2」です。
(2013年現在は、英語ノートを基礎にさらに発展させた"Hi, friends!1・2!"を使用)
英語ノートは、日本で初めて全国の小学校での英語教育が義務化される際に、
文科省が「指導指針」として作成した教材で、
我が国における小学校英語教育の初期段階に使用される教材としては
適切な内容と役割を持っていたと考えることができます。
金子先生もそのような英語ノートの実績を冷静に評価したうえで、
「学級担任は、「英語ノート」を教えるのではなく、
「英語ノート」で教えるという気持ちを持って、
授業展開を考えていかなければなりません」と述べています。
次に、教える側(教員)ではなく教わる側である子どもたちの変化についてです。
外国語活動によって子どもたちに良い変化はありましたか?
という質問に対して、好意的な回答が前回調査よりも今回の方が増えていることを
金子先生は評価しています。
そして、その一方で英語塾や英会話スクールなどに通っている子どもたちと
そうでない生徒たちとの格差が生まれてきていることも指摘し、
これからは児童の実態に応じた工夫が必要となってくるであろう、と提言しています。
最後に、調査において、
「約70%の学級担任が「外国語(英語)活動は専門に指導する教員(専科教員)が
教えるのがよい」という考えを持っている」という結果を紹介していますが、
同時に担任だからこそ出来ることもあるということを強く訴えています。
英語教育(外国語活動)が、コミュニケーションの手段を教える科目である以上、
教える側の専門性はある程度求められるでしょうが、
既に述べた担任と学級生徒との深いつながりを考えれば
担任教諭の担うべき役割がなくなることはない、と言えるのではないでしょうか。
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ベネッセ教育総合研究所
第2回 小学校英語に関する基本調査(教員調査)
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/syo_eigo/2010/index.html
解説・提言3 「外国語活動」の導入を通して見えてくる学校現場―「自信がなくても授業を遂行できるしくみ」とは何か?
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/syo_eigo/2010/pdf/data_04.pdf
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